大黒伸行のぶどう膜炎気まぐれ日記 ~思いつくままに~ 第15回:ベーチェット病
- 2025年6月21日
- 大黒伸行先生のぶどう膜炎気まぐれ日記,ぶどう膜炎,症状
皆さんこんにちは。みらい眼科で毎月第1金曜日の午後に「ぶどう膜炎外来」を担当している大黒です。
第15回:ベーチェット病 ~別名シルクロード病~
ベーチェット病は、全身の炎症を繰り返して起こす難病です(実際に難病疾患に指定されています)。特に、繰り返す有痛性口腔内アフタ(アフタというのは潰瘍のことです)、皮膚の紅斑、陰部の潰瘍、そして繰り返すぶどう膜炎、この4つの症状が全て揃うと「ベーチェット病」という診断がつきます。客観的なデータで診断するのではなく、症状診断ということになるのがほかの病気と少し違うところです。
ベーチェット病によるぶどう膜炎は、昭和の頃まではわが国で多く見られた疾患で、特に若い男性が罹患しやすく、失明することも稀ではなかった病気です(さだまさしが書いた「解夏」という小説、映画にもなりましたが、を一読されるといいですよ)。平成以降、新しく罹患する方が徐々に減ってきましたが(その一因として日本人の生活スタイルが欧米化したことが考えられています)、今でも原田病(前回お話ししました)、サルコイドーシス(次回にお話しします)と並んで「我が国の3大ぶどう膜炎」と呼ばれています。
トルコの皮膚科医であったベーチェット博士が1920年ころにみつけたということでこの名前がついています。しかし、紀元前5世紀、ギリシャのヒポクラテスが記した医学書の中に同じような症状の病気の記述があり、太古から存在していたことを伺わせます。また、疫学的に興味深いのは、ベーチェット病患者さんの分布が「シルクロード」と呼ばれた地域とほぼ重なりあうことです。そういうと「アジア人の病気か?」と思われるかもしれませんが、アメリカ大陸やヨーロッパのアジア系の人にはほとんど見られません。「シルクロード」に住んでないと発症しないのです。前回お話しした「原田病」もアジア人に多い病気です。しかし、原田病は世界のどこに住んでも病気になります。そういう意味で、エリアがかなり広いですが、ベーチェット病というのは一種の風土病とも言えますね。ということで、別名「シルクロード病」とも呼ばれています。
いまだ謎多きベーチェット病の治療について、次回お話ししたいと思います。
眼科 大黒伸行(おおぐろ のぶゆき)
大阪市「今福鶴見」にある眼科・皮フ科
みらい眼科皮フ科クリニック
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