三村治のやさしい神経眼科講座 その12 外斜視についてその2
- 2022年5月7日
- 三村治先生の神経眼科講座,神経眼科,症状,手術,斜視
ボツリヌス治療、神経眼科外来担当の三村治です。
外斜視は困っていないので放置しても大丈夫なのか?
また、もし手術するならいつまで待てるのか?
今日は既に1回お話をさせていただきましたが、岡本真奈先生と私の患者さんで一番多い外斜視の患者さんのお話をもう一度させていただきます。実は外斜視の患者さんの親御さんから、結構な頻度で「たまたま目の位置がずれているだけで、何も困っていないし、目が悪いとも思わないので、治療や手術は必要ないのでは‥」と言われることがあります。確かに片方ずつの目の視力を測定すると両眼とも視力は良好で、患者さんも困っている印象はありません。しかし、欧米での多くの研究で、斜視の患者さん(大人も含みます)、両方の目を使って見る両眼視機能が悪く、QOL(生活の質)が低下していることが明らかにされています。また、患者さんはその外見から大きな心理的ストレスを感じているとされています。さらに、最近では小児における精神疾患との関連性をボストンの小児病院の大規模なデータベースから評価したもので、精神疾患と斜視の関連に関する調整オッズ比(病気の罹り易さ)は2.01倍、不安障害は1.83倍、双極性障害は1.64倍、うつ病性障害は1.61倍とされています。特に外斜視で不安障害が2.70倍と最高の値を示しています。このように、斜視の患者さんは外見上は困っているように見えませんし、不満もおっしゃいませんが、外見からのコンプレックスを感じており、さらには内面では絶えず心理的なストレスに晒されていると考えます。
では、外斜視の手術はいつまでにすれば良いのでしょうか?
外斜視は先天性の発症は非常に少なく、内斜視よりある程度年長になってから起こってきます。最初は疲れた時や注意力が散漫になった時に目立つようになります。この時点では患者さんが目を真っすぐにしようと努力すれば真っすぐにできるので、よほど目の位置がずれた時でなければすぐに手術する必要はありません。ただ、遠くを見た時すぐにずれるようになれば危険信号と考えてください。また、小児に心理的ストレスをできるだけかけないために早期に手術を勧める眼科医もいますが、外斜視は手術した後に目の位置が外斜視に戻ることも多く、長い間経過観察を必要とする例も多くみられます。
ボツリヌス治療・神経眼科外来担当 三村治
大阪市「今福鶴見」にある眼科・皮フ科
みらい眼科皮フ科クリニック
当記事は三村治の個人的見解であり、紹介した記事や論文等が絶対に正しいというわけではございません。
当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への引用を厳禁いたします。
Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited.