論文紹介-008 感染性眼内炎~その3について
みらい眼科皮フ科クリニック院長 石川裕人です.
論文紹介のページでは、日々発表されている眼科に関する英文論文の中で、石川が特に興味を持った論文を皆さまにかみ砕いてお知らせする企画です。
感染性眼内炎について~その3~
みらい眼科皮フ科クリニック院長 石川裕人です。
今回は私が責任著者の感染性眼内炎についての論文3報のうち、3報目のご紹介です。
兵庫医大常勤の頃から、日本臨床網膜研究会(Japan Clinical Retina Study group;J-CREST)の一員として、多施設臨床研究に従事してまいりました。J-CREST参加施設の先生方がテーマを検討し、またデータを出し合い、いろいろな研究・論文発表がなされています。
この感染性眼内炎の仕事も、その一つです。
対象はJ-CREST参加施設にて感染性眼内炎と診断され治療をうけた症例です。そのうち、外因性眼内炎について検討したのが3報目となる以下の論文になります。外因性眼内炎とは、バイキンが目に直接入る(外傷や術後)ものを言います。
要約しますと、237人の外因性感染性眼内炎患者の242眼に関して後向き研究を行い、患者背景、最終視力予後不良(最終的にどれだけ目が悪くなったか)に関してのリスク因子の検討を行いました。
片目に眼内炎を発症した患者さんは234例(約98.7%)で、圧倒的に片眼性が多く、内因性は両眼性が多かったので(2報目)真逆の結果となりました。硝子体手術は約86%の症例で行われ、最終的に23%の人が最終視力矯正0.1未満(めがねをいれても視力0.1が出ない人)となりました。2割もの方が社会的失明状態となるのでやはり怖い病気ですね。
外因性眼内炎になった原因イベント(白内障手術、緑内障手術、硝子体手術、硝子体注射、外傷、その他)について調べたところ、もっとも多かった3つは白内障手術(38%)、硝子体手術(24%)、緑内障手術(14%)でした。
一方、この原因イベント別の解析で、もっとも視力予後が悪かった3つは、緑内障手術、その他、外傷の順でした。もともと緑内障の手術に至るような症例は、緑内障そのものが悪いため、そもそもの視機能が悪いことがこの解析結果に反映されていると思います。
病原体の解析では、コアグラーゼ陰性ぶどう球菌が検出されたものでは有意に視力予後良好でした(視力が回復した)。反面、肺炎球菌・エンテロコッカス属、真菌などが検出されると視力予後不良(視力が回復しなかった)でした。
全体のうち、14眼6%は眼球摘出が必要になりました。最終視力が0.1未満の人に関係していた因子・リスクファクターは、自覚症状から治療までの期間が長い、初診時の強い眼痛、感染した病原体の証明(はいったバイキンがわかった)、悪い初診時視力、原因イベントとして緑内障手術後、病原体の種類(肺炎球菌・エンテロコッカス属、真菌が多い)の6点でした。バイキンが証明されて目が痛いわ、視力でてないわ、という最初の状態だと治りも悪かったということです。
外因性眼内炎も滅多に起こる病気ではありません。しかし起こったときは早急に対処・治療しないと失明になる可能性があります。我々眼科医は、白内障手術をもっとも多くしていますから、術後になんらかの異変があればすぐかかりつけ医に相談ください。
今回は感染性眼内炎についての第3報目、外因性感染性眼内炎の論文のご紹介でした。
院長 石川裕人
大阪市「今福鶴見」にある眼科・皮フ科
みらい眼科皮フ科クリニック
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