本態性眼瞼痙攣
まぶたの開け閉めを行う目の周りの眼輪筋という筋肉が勝手に痙攣する病気です。疲れなどにより、まぶたや目の周りがピクピクすることはよくありますが、これがいつまでも治らなかったり、痙攣する範囲が広がってきたりした場合、治療を受けることをおすすめします。目が乾くなどの症状が見られることもあります。軽症、中等症であっても、自覚症状が気になって集中できないといった不快感が生じることも多いです。進行すると、まぶたを開けるのが困難になり、歩行中に人とぶつかることも。50歳代以上の方が多いのですが、まれに20~30歳で生じる場合もあります。
片側顔面痙攣
顔面神経が動脈硬化などで圧迫されて、まぶたや顔半分がぴくぴくとけいれんをおこします。MRIで顔面神経が血管で圧迫されていることがはっきりすれば、脳神経外科で手術するのが根治療法ですが、2週間以上の入院とある程度のリスクを伴います。また原則70歳までしか手術をしていただけません。
ボツリヌス毒素療法とは
ボツリヌス菌は食中毒を起こす細菌ではありますが、この毒素だけを取りだし、お薬としてごく微量を眼瞼の筋肉に注射すると筋肉が緩み、眼瞼・顔面痙攣の症状を抑えることができることがわかってきました。ただ、この注射は1回で通常3~4ケ月の効果しかない場合が多く、数ヶ月ごとに再注射を必要とする場合が多いです。
副作用について
上眼瞼に注射するとまぶたが下がってきたり、下眼瞼に注射すると下眼瞼が弛緩し、目をつむった時に薄目が開いたり、顔を洗うときに石鹸が目に沁みたりすることがあります。これらはすべてお薬が効きすぎているせいですので心配はありません。時間がたてば必ず良くなります。
手続きは?
ボツリヌス毒素は眼瞼痙攣・顔面痙攣の病名で保険適応になっていますが、1本が3万8千円余りと非常に高価なため、3割負担の本人および家族では1万5千円弱、高齢者医療の1割負担でも約5千円(所得により3割の約1万5千円になることも)の自己負担が必要です。
本当に安全ですか?
日本では1997年4月に認可されましたが、アメリカやヨーロッパではすでに20年以上の歴史のあるお薬です。兵庫医科大学病院眼科ではすでに2017年末現在で、2,611名の患者さんに注射を行い約9割の患者さんから満足しているとの回答を得ています。
分かりにくいことや不審な点がありましたら,ご遠慮なくお尋ねください。
みらい眼科皮フ科クリニック 院長 石川裕人
兵庫医科大学眼科学名誉教授 三村治