三村治のやさしい神経眼科講座 その5 複視について
- 2021年7月3日
- 三村治先生の神経眼科講座,神経眼科,症状,斜視
ボツリヌス治療、神経眼科外来担当の三村治です。
今回は「複視(物が2つ見える)」についてお話します.
「物が2つに見える」ことを複視といいますが,これには片目で2つに見える「単眼複視」と,片目ずつでは1つに見えるのに両方の目を開けると2つに見える「両眼複視」があります.このうち単眼複視は乱視や白内障などの目自体の主に光線の屈折異常で発生しますが,両眼複視は両方の目のそれぞれの視線がずれることにより起こります.両眼複視の原因には様々なものがあり,既に書かせていただいた「スマホ内斜視」や「甲状腺眼症」以外にも,「動眼神経麻痺」,「外転神経麻痺」,「滑車神経麻痺」,「強度近視」,「眼筋型筋無力症」などがあり,さらに原因不明のものも多くみられます.
3つの目を動かす神経の麻痺は,高齢者では糖尿病,動脈硬化,高血圧などを基礎にした脳血管障害が最も多いのですが,脳の中に異常があって起こることもあります.そのような場合にはMRIであたまの中、脳の精密検査が必要になりますので,みらい眼科皮膚科では放出の藍の都脳神経外科病院に紹介し、迅速に画像診断を行っていただいております.一方,若い方では脳血管障害よりウィルスなどの感染や甲状腺眼症や眼筋型筋無力症により発生する方が多くみられますので,血液検査も行います.近視は一般に眼球が前後に長くなることにより起こります(軸性近視)が,あまりに近視が強くなり過ぎると長くなった眼球が頭蓋骨内で少し傾いてしまい両眼複視をきたします.また,眼筋型筋無力症は目を動かす筋肉が疲れ易くなる病気ですが,最近高齢者を中心に増加傾向にあるので,別の機会に詳しく述べさせていただきます.
複視を訴える患者様への治療は単眼複視と両眼複視で大きく異なります.単眼複視では乱視があれば乱視矯正用の眼鏡あるいはコンタクトレンズの装用を行います.白内障による単眼複視と考えられる場合には白内障手術を行います.一方,両眼複視を訴える患者様では原因となる病気の治療を優先します.ただ,目を動かす神経の麻痺では,脳の検査で異常が無ければ経過を観察しているだけでも80-90%は自然に回復しますので,まずは定期的に通院していただきます.経過を観察しても自然に回復しない場合は,視線のずれの程度が少なければプリズム眼鏡の装用を,程度が大きければ斜視手術を行います.このような複視を訴える患者様のプリズム処方や手術は石川裕人院長や岡本真奈医師が担当しておられ,私もご相談や説明を担当しております.ご遠慮なく気軽にみらい眼科皮膚科にご来院ください.
ボツリヌス治療・神経眼科外来担当 三村治
大阪市「今福鶴見」にある眼科・皮フ科
みらい眼科皮フ科クリニック
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