三村治のやさしい神経眼科講座 その16 エタンブトールによる眼の副作用について
- 2023年10月21日
- 視神経炎,三村治先生の神経眼科講座,神経眼科,症状
ボツリヌス治療、神経眼科外来担当の三村治です。
エタンブトールによる眼の副作用について
エタンブトールは古くから抗結核薬として有名で,現在もなお結核の治療に広く使われているお薬です.しかし,最近になって急増している非定型好酸菌症(結核菌は定型的抗酸菌になります)の患者さんにも使われることの方が多くなっています.非定型抗酸菌は土壌や水辺などの自然環境,水道や貯水槽などの給水システム,家畜などに広く生息しています.この菌を含んだ塵埃や水滴を吸い込むことによって,主として肺や気管支などに感染すると考えられており,結核菌のようにヒトからヒトへ感染することは極めて稀です.AIDSの患者さんや免疫不全の患者さんに多くみられると教科書には書いてありますが,私の経験した患者さんのほとんどは,基礎疾患のない少し痩せた印象のある中高年女性の慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎です.
そうなんです.このエタンブトールは結核や非定型好酸菌の感染には良く効くのですが,眼科的な副作用が非常に問題になっています.しかも薬の添付文書には副作用の項の一番に「視力障害」が出ていますが,なぜかエタンブトールを処方している内科の主治医の先生には「うっかり者」のお医者さんが結構おられます.エタンブトールは視力障害が出て来て,すぐに内服を中止すると,一旦低下した視力が結構回復する患者さんが多いのです.それを誤解して,すぐに辞めるのではなく,キリが良い所まで続けたり,減量するだけの対応の先生がおられます.
この重大な副作用で視力が落ちてしまうと、患者さんの生活の質を大きく損ないます.視力が怪しいと思えばすぐにエタンブトールを中止することが最良の対策です.実は多くの眼科医には,視力よりも早く視機能の低下を予測できる方法があります.それは中心フリッカ値という光の非常に速い「ちらつき」を感知する方法で専用の測定器を使います.
もちろん当院にも中心フリッカ測定装置があり,院長はじめ全員の眼科医がエタンブトール中毒への対処法を心得ています.もし,貴方や貴方のお母さんが慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎と診断され,エタンブトール内服処方を受けられたら,定期的な検査をすることが重要です.
ボツリヌス治療・神経眼科外来担当 三村治
大阪市「今福鶴見」にある眼科・皮フ科
みらい眼科皮フ科クリニック
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