三村治のやさしい神経眼科講座 その9 動眼神経麻痺について
- 2021年11月6日
- 三村治先生の神経眼科講座,神経眼科,症状,斜視
ボツリヌス治療、神経眼科外来担当の三村治です。
今回は「動眼神経麻痺」についてお話します.
「目は心の窓」という言葉があります.確かに眼科の診察で患者さんの目の奥(眼底)を除くと動脈硬化の状態や糖尿病網膜症の状態が直接観察できます.しかし,それ以外にも生命にも関わる重大な脳神経外科の病気が目の症状として現れることがあります.その代表的なものが動眼神経麻痺です.動眼神経は眼球やマブタを動かす神経で,この麻痺では眼球をうまく動かすことができず,「物が二重に見える」複視や,「マブタが下がる」眼瞼下垂が出現します.動眼神経は非常に太い神経で,中脳という部分から出て脳の腹側を走行するのですが,その部分でたくさんの動脈と密接して走行しています.そのため,脳の動脈瘤が大きくなると隣接している動眼神経を圧迫して麻痺を来し,複視や眼瞼下垂を起こします.特に太い動眼神経の中では中央に眼球を動かす神経線維があり,周辺にヒトミを小さくする神経線維が走っています.そのため外側から動脈瘤が動眼神経を圧迫するとヒトミが大きくなる特徴が出やすいとされています.
私も大学病院や救急病院での勤務中,動眼神経麻痺の患者さんをたくさん診察させていただきました.もちろん麻痺の原因では糖尿病などの微小循環障害・血の巡りが悪くなって発症する患者さんの数の方が圧倒的に多いのですが,緊急でMRIを撮り頭をチェックすると脳動脈瘤が見つかり,脳神経外科で手術して事なきを得た患者さんもしばしば経験しました.しかし,いつも緊急扱いで脳神経外科に紹介するのですが,残念なことにその診察待ちの間に動脈瘤の破裂を来し,大角度の斜視と眼瞼下垂の後遺症を残した患者さんも経験しました.
もし,ものが2つに見えたり,片方のマブタが下がってきた場合には動眼神経麻痺の可能性があります.頭痛があったり鏡を見て片方のヒトミが大きかったりすれば動脈瘤の危険因子であると言われています.もし、そのような症状があればできるだけ早く当院に受診していただければ幸いです.また,残念な後遺症が残った場合でも当院の院長診や三村診でご相談いただければ何らかの対処法についてお話をさせていただきます.
このような症状に心当たりがあれば,是非当院の三村治または石川院長に遠慮なくご相談ください.
ボツリヌス治療・神経眼科外来担当 三村治
大阪市「今福鶴見」にある眼科・皮フ科
みらい眼科皮フ科クリニック
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