大黒伸行のぶどう膜炎気まぐれ日記 ~思いつくままに~ 第17回:ベーチェット病 その3
- 2026年2月28日
- 大黒伸行先生のぶどう膜炎気まぐれ日記,ぶどう膜炎,症状
皆さんこんにちは。みらい眼科で毎月第1金曜日の午後に「ぶどう膜炎外来」を担当している大黒です。
第17回:ベーチェット病 ~バイオテクノロジーが救った病気~
バイオテクノロジーの進歩により、2000年代になって「抗体医薬」が開発されはじめました。「抗体医薬」というのは、病気を引き起こす中心的役割を果たしているタンパク質に対する抗体を、バイオテクノロジーを駆使して人工的に作成したものです。
インフルエンザの予防接種を受けてインフルエンザウイルスの抗体を作る、というお話はよく聞かれると思います。「抗体を作る」といえば、ウイルスなど感染症を予防するためのものと思われるかもしれません。人の体には免疫細胞が存在し、体内に侵入してきた微生物を敵として認識し、それらを排除するために抗体を産生するメアニズムが存在します。それを応用して作成されたのが抗体医薬です。その抗体医薬の代表的なものがインフリキシマブという薬です。これは炎症を引き起こすタンパク質の1つであるTNFαに対する抗体で、最初は関節リウマチに対する治療薬として使用され始めました。その効果があまりにも劇的なので、いろいろな免疫疾患に応用されるようになり、2007年にベーチェット病にも使えるようになりました。
インフリキシマブのベーチェット病に対する効果は素晴らしく、実に9割以上の患者さんで炎症発作を止めることができるようになったのです。それまでのコルヒチン+シクロスポリンでは考えられない効果です。当初は、コルヒチン+シクロスポリンで炎症発作が止められない方に使用されていたのですが、炎症発作がほぼ完全に制できることが判明してくると、早い段階(つまり視力がまだ低下していない段階)でのインフリキシマブ治療導入ということが行われるようになりました。その結果、インフリキシマブが出てくる以前では、ベーチェット病治療の目標は「なんとか日常生活ができる視力を維持」することだったのですが、今では「普通の生活ができる視力を維持」することへと上がっています。失明するかもしれない難病だったベーチェット病が、バイオテクノロジーの進歩によって「治る病気」になったといえます。その後、2016年にはアダリムマブという抗体医薬が使えるようになり患者さんの選択肢が増えました。
インフリキシマブは点滴治療なので、予約した日に病院に来て、数時間点滴で拘束されます。一方、アダリムマブは皮下注射なので、決まった日に自分で家や職場で注射を打てばよいのです。ベーチェット病は若い方がかかる病気なので、就学・就労されている方がほとんどです。そういう意味で選択肢が増えたのは朗報です。ただ、関節リウマチではTNFα以外のたくさんのタンパク質に対する抗体医薬が使えるようになっていますが、ベーチェット病(ぶどう膜炎)では現時点ではこれら2つしか使えません。今後、いろいろな抗体医薬がぶどう膜炎に使えるようになればいいのにと思っています。
ベーチェット病のお話は今回で終わりです。次からはサルコイドーシスという病気についてのお話です。

眼科 大黒伸行(おおぐろ のぶゆき)
大阪市「今福鶴見」にある眼科・皮フ科
みらい眼科皮フ科クリニック
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