論文紹介-005 日本におけるぶどう膜炎の疫学について
- 2022年2月26日
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みらい眼科皮フ科クリニック院長 石川裕人です.
論文紹介のページでは、日々発表されている眼科に関する英文論文の中で、石川が特に興味を持った論文を皆さまにかみ砕いてお知らせする企画です。
今回は「日本におけるぶどう膜炎の疫学」についてのお話です。
ぶどう膜炎という病気をご存知でしょうか? 当院では私や大黒先生といったぶどう膜炎の専門家がおりますが、ぶどう膜という場所に炎症を起こす病気のことです。
ぶどう膜炎については大黒先生のブログも御覧ください。
さて、今回ご紹介する論文は、大黒先生も著者の一人になっている論文で、日本におけるぶどう膜炎の疫学・動向についてまとめてあるものです。
Sonoda KH, Hasegawa E, Namba K, Okada AA, Ohguro N, Goto H; JOIS (Japanese Ocular Inflammation Society) Uveitis Survey Working Group. Epidemiology of uveitis in Japan: a 2016 retrospective nationwide survey. Jpn J Ophthalmol. 2021 Mar;65(2):184-190. doi: 10.1007/s10384-020-00809-1. Epub 2021 Mar 11. PMID: 33694024.
日本眼炎症学会の先生方が全国の代表的な眼科施設からデータをいただいてまとめたものです。
この日本におけるぶどう膜炎の疫学調査は昔から定期的に行われているものです。
なので、私が目医者になった頃は、3大ぶどう膜炎というのはサルコイドーシス、原田病、ベーチェット病でした。
今でも、3大ぶどう膜炎というとこの3疾患を思いおこすのが、一般的な目医者だと思います。
ところが、昔からのデータの移り変わりを見てみると、3大ぶどう膜炎、とりわけベーチェット病が少なくなってきています。
詳しくは論文からもってきたこの図を御覧ください。
2002年当時、1位はサルコイドーシス13.3%、2位はVKH(原田病のことです)6.7%、3位はベーチェット病6.2%です。
ただこの3大ぶどう膜炎をあわせても26.2%、約1/4しかありません。
2009年になるとサルコイドーシスが少し減り、原田病はよこばいですが、ベーチェット病は減って3.9%です。
3大ぶどう膜炎全体で20.5%まで減っています。
そして今回の2016年では、1位はサルコイドーシス10.6%、2位はVKH8.1%、6位にベーチェット病4.2%で、3大ぶどう膜炎全体で22.9%でした。
ベーチェットが減った変わりといいますか、虹彩炎の割合がふえてきています。
ヘルペス性虹彩炎が増えてきていますが、ヘルペスウィルスを同定する技術、PCRが普及しているせいもありますね。
ぶどう膜炎はなかなか難しい病気です。点眼だけで治せるものもあれば、ステロイドや免疫抑制剤を飲まないとコントロールできない場合や、手術をしないといけない場合もあります。
ぶどう膜炎を疑う症状は色々ありますが、充血、霧視、飛蚊症、眼痛などが急激におこったような場合はすぐにお近くの眼科を受診ください。
病気は、眼科にかかわらず、早期発見早期治療がいい結果につながります。
院長 石川裕人
大阪市「今福鶴見」にある眼科・皮フ科
みらい眼科皮フ科クリニック
当記事は院長石川の個人的見解であり、紹介した記事や論文等が絶対に正しいというわけではございません。
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