論文紹介-005 コロナウィルス感染症と網膜血管閉塞について
みらい眼科皮フ科クリニック院長 石川裕人です.
論文紹介のページでは、日々発表されている眼科に関する英文論文の中で、石川が特に興味を持った論文を皆さまにかみ砕いてお知らせする企画です。
今回はコロナ感染症と網膜血管閉塞についての論文のご紹介です。
2019年から始まったコロナ禍。一向に収まる気配もなく、我々の生活も一変してしまいました。くしくも、2019年新型コロナウィルスによる肺炎が中国武漢で最初に発生したとき、内部告発という形でコロナ肺炎を報告し、自身も感染し亡くなられたのは、眼科医の李文亮さんでした。最初の頃から、コロナウィルスの目への影響も示唆されていたんですね。
コロナウィルスの代表的な目への症状は結膜炎と言われています。
しかし、今回JAMA ophthalmologyから発表された論文では、網膜(目の中のフィルムにあたる部分)の血管がコロナウィルス感染後に詰まりやすくなる、網膜静脈閉塞症を発症しやすくなるという結果を報告しています。
元来、コロナウィルス感染症は、コロナウィルスに感染したのちに、コロナウィルスをなるべく退治しようと自分自身の免疫反応が起こります。感染したウィルス量が多いと、この免疫反応も強くなり、大量のサイトカインが放出されます。サイトカインは細胞から出るタンパク質で、炎症を火事に例えるなら、消火剤でしょうか、ようは炎症を抑えるよう他の細胞に命令するものです。
感染の量が多くなると、このサイトカインが大量に出されます。これをサイトカインストーム(免疫暴走)と呼びます。この状態になると、サイトカイン・消火剤の影響が過剰になり、凝固異常が過剰に起こります。簡単にいうと血が固まりやすくなります。
これが血栓形成と言われる状態で、コロナウィルス感染症は重症であれば体中の血管が詰まってしまう可能性があります。
目の奥の血管には網膜静脈や網膜動脈がありますが、本論文では特に、網膜静脈が詰まりやすいと結論付けています。コロナウィルス感染後6ヶ月の時点で、感染前6ヶ月のデータ比較したところ特に網膜静脈閉塞症の発症率が上がっていました。
コロナウィルス感染症は重篤な肺炎を併発すると死に至る可能性もある怖い病気です。その一方で、肺炎以外にもいろいろな病態を引き起こすことがわかってきています。
いずれにせよ、コロナウィルスに感染すること自体を0にすることはもはや不可能に近いと思いますが、感染したとしてもワクチンを売っていれば重症化することは稀です。
特に若い世代で3回目の接種をしていない方が散見されますが、今一度考えてみてはどうでしょうか?
今回はコロナウィルス感染症と網膜血管閉塞についての論文のご紹介でした。
院長 石川裕人
大阪市「今福鶴見」にある眼科・皮フ科
みらい眼科皮フ科クリニック
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