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「網膜剥離レジストリー研究について」大阪市今福鶴見にある眼科・皮フ科 みらい眼科皮フ科クリニック

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「網膜剥離レジストリー研究について」大阪市今福鶴見にある眼科・皮フ科 みらい眼科皮フ科クリニック

論文紹介-009 網膜剥離レジストリー研究について

正秋会理事長 みらい眼科皮フ科クリニック院長 石川裕人です.

論文紹介のページでは、日々発表されている眼科に関する英文論文の中で、石川が特に興味を持った論文を皆さまにかみ砕いてお知らせする企画です。

 

感染性眼内炎について~その3

 

久しぶりの論文紹介のコーナーです。

今回も私が責任著者の網膜剥離の多施設研究についての論文をご紹介します。

 

我々、硝子体手術を専門とする眼科医は、網膜硝子体学会という学会に普通は入会しておりますが、この網膜硝子体学会での網膜剥離患者登録研究(日本網膜剥離レジストリー)というものがあり、そのデータを活用し研究を行いました。

すでにこのレジストリーからは派生論文が20本以上もありますが、今回、意図的網膜裂孔と視力予後という観点からデータの検討を行いました。

 

Fukuyama H, Ishikawa H, Gomi F & Japan-Retinal Detachment Registry Group. Impact of drainage retinotomy on surgical outcomes of retinal detachment: insights from the Japan-Retinal Detachment Registry. Sci Rep 14, 7795 (2024). doi: 10.1038/s41598-024-58453-

 

意図的網膜裂孔とは、網膜剥離のもともとの原因となった網膜の裂け目ではなく、網膜剥離を治すためにまたわざと穴をあけることがあり、その場合の穴を意図的網膜裂孔と言います。

網膜剥離の治療の方法は手術でないと治せない場合には、大きく分けて硝子体手術(目の中からの手術)と網膜復位術(目の外からの手術)があります。硝子体手術を行う際に、網膜剥離の部分が非常に広範囲な場合や、増殖を伴っている場合、いわゆる難しい、難症例の場合に、この意図的網膜裂孔を作成することがあります。かく言う私も作成することにあまり躊躇しないほうではあります。ただ、近年では意図的網膜裂孔をなるべく作成せず、パーフルオロンという水よりも重たい液体を用いて、原因裂孔から網膜下液を押し出す方法が取られることも増えてきています。

これは意図的網膜裂孔を作成することによって、当然ながら新たに穴を作るということがいいのか、悪いのか、また合併症として黄斑上膜を作りやすいということも言われていたため、意図的網膜裂孔の作成を敬遠する先生も増えてきました。

ただし、この意図的網膜裂孔によってどういう影響がおこるか、ということについて、科学的に検証した論文はなかったわけで、今回行った次第です。

 

結論ですが、

意図的網膜裂孔を作成したからといって、網膜剥離の手術の成功率や、術後の視力に影響を与えることはありませんでした。一方で、昔から言われていたとおり、皆の経験通り、網膜剥離を治したあとで術後の黄斑上膜、黄斑パッカーは有意に、意図的網膜裂孔を作成した群で発生することがわかりました。ただ、黄斑上膜が術後に発生してそれをまた再手術で治したとしても視力には影響しないということです。すなわち、網膜剥離の術後の視力に影響している因子に、意図的網膜裂孔は関係ないという結果となりました。

 

今後も、やみくもに経験則だけで手術をするのではなく、こういったエビデンスに基づいた治療を心がけたいと思います。

 

医療法人正秋会 理事長 石川裕人

大阪市「今福鶴見」にある眼科・皮フ科 みらい眼科皮フ科クリニック

守口市 川口眼科醫院

 

当記事は理事長石川の個人的見解であり、絶対に紹介した記事や論文等が正しいというわけではございません。

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