院長Blog-020 緑内障と抗コリン薬
みらい眼科皮フ科クリニック院長 石川裕人です。
12/9に西宮薬剤師会主催の学術研修会に、講師として呼ばれました。お題は、「お薬手帳への緑内障シール貼付の試み ~西宮医師会・眼科医会・薬剤師会共同研究の結果報告~」です。緑内障は40歳以上の日本人の5%という有病率であり、見える範囲(視野)が狭くなる病気です。
この緑内障において、唯一エビデンスのある治療法は眼圧を下げることになりますが、基本的には薬剤治療、点眼治療を行い、それでも病気が悪くなることを止めれない場合には手術療法が選択されます。で、緑内障ですが、タイプ・病型によって、全身のお薬に制限が出てくる場合があります。
緑内障の病型は大きく分けて、正常眼圧緑内障・開放隅角緑内障・閉塞隅角緑内障に分けることができます。
日本人では正常眼圧と開放隅角がほとんどを占めますが、0.6%(緑内障の中で12%)を占める閉塞隅角緑内障の患者さんは、内科的な治療をする際に注意が必要です。
閉塞隅角緑内障とは隅角が狭いタイプの緑内障で、若いころに目が良かった、メガネなんて老眼鏡以外にかけたことのなかった人に起こりやすい緑内障です。
隅角というのは目の中のお水の排水溝である繊維柱帯があるところで、ここが狭いとお水が通りにくくなるので、眼圧が上がります。眼圧があがると視神経が障害されて緑内障になってしまいます。
この狭い隅角の方、狭隅角・狭隅角緑内障の方に、抗コリン薬というものを使うと、眼圧がさらに上昇してしまうリスクがあります。抗コリン薬は、交感神経に作用するお薬ですが、簡単にいうと瞳孔を開いてしまう作用があります。瞳孔が開くと、瞳孔の根本にある虹彩根部というところが分厚くなってしまって、隅角がさらに狭くなります。さらに狭くなると、もともと狭かった隅角が完全に閉塞してしまい、お水が全く通れなくなるので眼圧が急激にあがり、緑内障発作状態になります。この状態で、数日放置すると最悪失明に至ります。
緑内障発作は、急激におこる眼痛・頭痛で、眼圧がとても高くなり(大体50mmHgを超えてしまう)、目が充血しカチカチに硬くなる状態です。パッと見ると、クモ膜下出血の症状に似ています。特に今の時期、寒い冬場の夜~朝方にかけて起こりやすく、こういった症状が出たら救急車を呼んで、通常はまず頭のチェックを行います。頭に出血もなく、クモ膜下出血が否定されれば、改めて眼科に紹介となることがほとんどです。優秀な脳外科の先生であれば、すぐに緑内障発作と鑑別診断できる場合もあると思いますが、眼科の先生以外にはなかなか鑑別は難しいと思います。
眼科に送られてくると、すぐに緊急手術となります。目の状態にもよりますが、狭くなった隅角を広げるために分厚くなった白内障治療をするか(緑内障の治療なのに白内障治療というところが少しややこしいです)、別にお水の通り道を作るために周辺虹彩切除術ということをしたりします。
この緑内障発作が、閉塞隅角緑内障の患者さんに、抗コリン薬を使うことによって起こってしまう危険性があるので、通常薬局さんや内科さんは、緑内障があるときに、抗コリン薬をつかっていいかということを眼科に連絡して聞くわけなんですね。これを疑義紹介といいます。
ただ、これ、薬局さんも聞かれる眼科さんも、めんどくさい話なんですよね。
これを解決しようということで、ほとんどの患者さんが持っているお薬手帳に、閉塞隅角緑内障かどうか、抗コリン薬をつかっていいかどうかを一目瞭然となるシールを貼りましょうという試みをしました!ってのが今回のお話です。
この試みで、薬局さんはとっても業務が楽になったと好評でした。
ただ、問題点としてはシールを作成するにしても、お金がかかる・・・のでもっとコスパのいい方法を考えていこうという話になっています。
本日は緑内障と抗コリン薬の関係についてのお話でした。
目に関して、すこしでもおかしいな?という時は最寄りの眼科にご相談ください。
病気は、眼科にかかわらず、早期発見早期治療がいい結果につながります。
院長 石川裕人
大阪市「今福鶴見」にある眼科・皮フ科
みらい眼科皮フ科クリニック
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